自分の最期を考えてみる

死は全ての人に等しく訪れます。死の間際の自分がどうありたいかを考えることは、今後の生き方を改めて考える機会ともなります。死について考えることは誰しも進んでやりたいことではありません。しかし、自分が望まない最期のあり方を家族や近しい人に伝えることよって、お互いが悔いのない最期を送ることができるのではないでしょうか。

死にゆく自分に対して過剰な治療を求めない意思を表明し、形に残す手段として尊厳死宣言公正証書があります。

「尊厳死」とは、一般的に「回復の見込みのない末期状態の患者に対して、生命維持治療を差し控え、または中止し、人間としての尊厳を保たせつつ、死を迎えさせることをいう。」(日本公証人連合会ホームページより)

終末期を迎えた人に点滴や胃ろうにより栄養を補充する医療行為は比較的よくみられるものです。しかし、無理な栄養摂取が死に至るまでの時間をいたずらに長引かせることにもつながりかねません。自然死より、痛みや苦しみも長引く間は続くかもしれません。

「尊厳死宣言公正証書」とは、嘱託人が自らの考えで尊厳死を望む、すなわち延命措置を差し控え、または中止する旨等の宣言をし、公証人がこれを聴取する事実実験をしてその結果を公正証書にするものです。(日本公証人連合会ホームページより)

尊厳死を望む人が、自分の意思を公証人に伝達して公正証書をつくるものです。

公正証書は以下の公証人法により公文書の扱いとなります。したがって、公正証書として残すことは、自分の意思を残した書面が真実であるとの強力な証拠となります。

公証人法
第一条 公証人ハ当事者其ノ他ノ関係人ノ嘱託ニ因リ左ノ事務ヲ行フ権限ヲ有ス
一 法律行為其ノ他私権ニ関スル事実ニ付公正証書ヲ作成スルコト
二 私署証書ニ認証ヲ与フルコト
三 会社法(平成十七年法律第八十六号)第三十条第一項及其ノ準用規定並一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(平成十八年法律第四十八号)第十三条及第百五十五条ノ規定ニ依リ定款ニ認証ヲ与フルコト
四 電磁的記録(電子的方式、磁気的方式其ノ他人ノ知覚ヲ以テ認識スルコト能ハザル方式(以下電磁的方式ト称ス)ニ依リ作ラルル記録ニシテ電子計算機ニ依ル情報処理ノ用ニ供セラルルモノヲ謂フ以下之ニ同ジ)ニ認証ヲ与フルコト但シ公務員ガ職務上作成シタル電磁的記録以外ノモノニ与フル場合ニ限ル

第二条 公証人ノ作成シタル文書又ハ電磁的記録ハ本法及他ノ法律ノ定ムル要件ヲ具備スルニ非サレハ公正ノ効力ヲ有セス

尊厳死の普及を目的とした団体があります。公益財団法人 日本尊厳死協会(以下、尊厳死協会とします)です。

尊厳死協会では、リビング・ウイルを以下のように提唱しています。

「あらゆる手段を使って生きたい」と思っている多くの方々の意思も、尊重されるべきことです。一方、チューブや機械につながれて、なお辛い闘病を強いられ、「回復の見込みがないのなら、安らかにその時を迎えたい」と思っている方々も多数いらっしゃいます。「平穏死」「自然死」を望む方々が、自分の意思を元気なうちに記しておく。それがリビング・ウイル(LW)です。(尊厳死協会ホームページより)

尊厳死、リビング・ウイルについて考えることに躊躇するのは当然のことです。ただ、何かの折に心に留めてまとめられる機会が生まれることが、自分にとっても周りの方にとっても不安が少し解消されていくのではないでしょうか。何かご相談がございましたら、お気軽に弊事務所へご連絡ください。

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