養子縁組をすると、子と同等の法的立場に立ちます。養親が亡くなった時、養親に実子がいても、基本的には同じ分の相続財産を受け取ることができます。
例えば、実子2人と養子1人のケースではそれぞれが1/3ずつの相続を引き継げます。
養子縁組によって、親族関係が複雑になる時、相続できない場合も生じます。
令和6年11月12日に、最高裁第3小法廷での上告審判決が下されました。判決では、養子縁組による相続の範囲を厳格に示したものでした。
日本経済新聞(2024年11月13日付)の記事の一部を以下に抜粋します。
「原告は神奈川県に住む30代と40代の男女。原告の母親は2人を生んだ後に自身のおばの養子となり、おばの実子である男性との関係は「いとこ」から「兄弟」になった。その後、母親は2002年に死去し、男性も19年に亡くなった。男性に子どもはおらず、本来なら母親が妹として遺産を相続したはずだった。原告は母親に代わって自身が相続できると考え、男性の残した土地や建物の所有権移転登記などを申請したが、法務局は「権限がない」として却下。処分の取り消しを求めて国を提訴した。」
母親が死亡すると、母親が受け取るとされた相続財産をその子が代わって受け取るという制度が民法で定められています。代襲相続です。
(子及びその代襲者等の相続権)
第八百八十七条 被相続人の子は、相続人となる。
2 被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。ただし、被相続人の直系卑属でない者は、この限りでない。
3 前項の規定は、代襲者が、相続の開始以前に死亡し、又は第八百九十一条の規定に該当し、若しくは廃除によって、その代襲相続権を失った場合について準用する。
第八百九十一条の規定とは、相続人の欠格事由を定めたもので、被相続人を殺害したなどといった事情のある者を相続人とさせないものです。
代襲相続人はどの範囲まで認められるのかについても民法は以下に定めています。
(代襲相続人の相続分)
第九百一条 第八百八十七条第二項又は第三項の規定により相続人となる直系卑属の相続分は、その直系尊属が受けるべきであったものと同じとする。ただし、直系卑属が数人あるときは、その各自の直系尊属が受けるべきであった部分について、前条の規定に従ってその相続分を定める。
2 前項の規定は、第八百八十九条第二項の規定により兄弟姉妹の子が相続人となる場合について準用する。
被相続人に子がいた場合は、その子が代襲相続できることは勿論、その孫も代襲相続人となり得ることもあります。被相続人に子がなく、両親も亡くなり、独身で親族は兄弟姉妹のみの場合を考えてみます。兄弟姉妹も亡くなっていて、その兄弟姉妹に子がいる場合は、その子は代襲相続人になり得ます。しかし、直系の場合と違い、その子の子はなりません。今回のケースは、養子縁組で形成された妹の子が原告の立場でした。最高裁は代襲相続を認めないとの判断を下しました。
一見すると、原告の母親がいとこから兄弟になったことで、代襲相続が起こりそうにもみえます。しかし、原告らが生まれた後に母親が養子縁組となっていることから、最初は死亡した男性との関係はいとこの子どもという親族としてはそれなりに遠い関係でした。母親の養子縁組がなかったら、当然に代襲相続は起こりません。養子縁組や原告の誕生の時期など考慮すべき難しい問題はあると思います。
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