核家族や一人暮らしの方が増えた中、お墓をどう引き継いで、管理していくかという心配ごとを抱えている方が増えています。
まずは、お墓の引き継ぎはどのように定められているのかを確認してみます。お墓の管理を引き継ぐことについて、相続財産とは違う取扱いを民法は定めています。
第八百九十六条 相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。
第八百九十七条 系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。
2 前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。
民法第八百九十六条は一般の相続財産について、第八百九十七条は系譜、祭具及び墳墓についての承継を特に定めています。
系譜とは、家系図や過去帳などをいいます。
祭具とは、位牌や仏壇、神棚などをいいます。
墳墓とは、お墓のことで、墓石や墓碑などをいいます。
先祖代々のお墓を管理・維持していくためには、引き継ぐ者の存在が不可欠です。一般に長男がお墓を引き継ぐ者とされることが慣習化されていました。
しかし、結婚しない長男の方もいます。また、夫婦のみで子のいない世帯もいます。先祖代々のお墓から遠く離れて生活している方も少なくないです。
地元で暮らす生活スタイルから、地元から出て別のところで暮らす生活スタイルに変化しました。結果、慣習に従ってお墓を守ることがとても難しくなっています。
社会状況の変化から、先祖代々のお墓を引き継ぎたくても、とてもじゃないが出来ないという方の割合が増えたように思います。
管理が行き届かないお墓は、やがては荒れ果てた無縁墓と化してしまいます。そうなる前に一つの対処方法として、墓じまいがあります。
墓じまいとは、管理できないお墓を、お寺や霊園といった墓地管理者に返還することです。墓じまいを行う際は、一緒に返還するお墓にあるお骨を別の場所に埋葬などしなければなりません。お骨を別の場所に移すことを改葬といいます。
墓地、埋葬等に関する法律で、関連する用語を以下のように定義しています。
第二条 この法律で「埋葬」とは、死体(妊娠四箇月以上の死胎を含む。以下同じ。)を土中に葬ることをいう。
2 この法律で「火葬」とは、死体を葬るために、これを焼くことをいう。
3 この法律で「改葬」とは、埋葬した死体を他の墳墓に移し、又は埋蔵し、若しくは収蔵した焼骨を、他の墳墓又は納骨堂に移すことをいう。
4 この法律で「墳墓」とは、死体を埋葬し、又は焼骨を埋蔵する施設をいう。
5 この法律で「墓地」とは、墳墓を設けるために、墓地として都道府県知事(市又は特別区にあっては、市長又は区長。以下同じ。)の許可を受けた区域をいう。
6 この法律で「納骨堂」とは、他人の委託をうけて焼骨を収蔵するために、納骨堂として都道府県知事の許可を受けた施設をいう。
7 この法律で「火葬場」とは、火葬を行うために、火葬場として都道府県知事の許可をうけた施設をいう。
改葬先としては、納骨堂や永代供養墓を選択される方が多い傾向にあります。納骨堂や永代供養墓では、日々の管理が不要になります。また、費用面でも経済的です。もちろん、寺院や霊園を改葬先として選ばれる方もいます。
納骨堂は、建物の中にお骨を収めることができます。永代供養墓は、石碑タイプのものから樹木葬タイプといったものの中から選択することができます。
どのような供養の方法をしていくかを考えておく必要があります。合葬と合祀の選択です。
合葬とは、一つの区画に他のご遺骨と合わせて骨壺のまま埋葬されるものです。他のご遺骨と混ざることはないです。
合祀とは、骨壺から焼骨を取り出して、他のご遺骨と一緒に埋葬するものです。
合葬も一区切りの期間(例えば、十三回忌など)が過ぎたら合祀となることが一般的です。
墓じまいや改葬には、改葬許可申請などの手続きが必要となります。墓じまいなどの内容について相談のある方は、お気軽に弊事務所へご連絡ください。
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