故人が所有していた家屋や土地は、相続財産として相続の対象となります。
相続財産として、遺言があれば遺言に沿って、遺言がなければ相続人間で遺産分割協議書を作成し、相続財産を分け合うことになります。ここで、相続人がいるのかどうか分からないと、相続財産を処分することができないという事態に陥ります。
相続人が複数いて、そのうちの一人が所在の分からないケースや、関係する相続人の所在が不明な場合、家屋や土地を適切に管理できなくなります。
相続人の所在が分かっても、全員が相続放棄した場合も同様です。
今、家屋や土地が適切な状態に保たれず、近隣の方に不安を引き起こしている空き家問題につながりかねないことです。
こうした行先のない土地の仮の所有者として、民法では法人を定めることとしています。特別財産として独自に管理される必要があるからです。
第九百五十一条 相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は、法人とする。
相続財産を法人化した上で、財産を管理する者を決めていきます。
第二十五条 従来の住所又は居所を去った者(以下「不在者」という。)がその財産の管理人(以下この節において単に「管理人」という。)を置かなかったときは、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求により、その財産の管理について必要な処分を命ずることができる。本人の不在中に管理人の権限が消滅したときも、同様とする。
2 前項の規定による命令後、本人が管理人を置いたときは、家庭裁判所は、その管理人、利害関係人又は検察官の請求により、その命令を取り消さなければならない。
相続財産が民法九百五十一条により法人化した場合は、財産の管理をする者として、清算人が選任されます。
第九百五十二条 前条の場合には、家庭裁判所は、利害関係人又は検察官の請求によって、相続財産の清算人を選任しなければならない。
2 前項の規定により相続財産の清算人を選任したときは、家庭裁判所は、遅滞なく、その旨及び相続人があるならば一定の期間内にその権利を主張すべき旨を公告しなければならない。この場合において、その期間は、六箇月を下ることができない。
利害関係人の中には、故人の債権者や債務者、建物や土地に起こった急な事態に対処した者、内縁の者、遺贈を受ける者などが含まれます。
最終的に、利害関係人の中で引き取り先がない相続財産は国庫に帰属することになります。
しかし、対象となる土地は限定されていますし、建物が存在する土地は対象外になっています。また、国庫帰属を承認されるための条件として、十年分の土地管理費相当額の負担金の納付が命じられます。簡単には国庫へ帰属させることはできません。
相続人の所在が不明な場合の土地の管理の流れをみてきました。空き家などの問題を含めて、相続対策としてある程度の道筋を考えていきたいところであります。何かご質問等ございましたら、お気軽に弊事務所へご連絡ください。
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