遺言の内容をスムーズに行うために

遺言書が残されていても、遺言の内容を実現するように動く人がいないと相続に時間が思いのほか要することになります。一般的には、相続人の中(遺された家族)から、了承を得た者が代表として遺言内容の実現を図るため、様々な手続きをすすめていくことと思います。

しかし、最近、相続人が海外にいる、遠方に住んでいるなどの理由から相続人自身が手続きを進めるために動くことができない事態が生じています。また、相続人がいない一人暮らしの方が、ご自分の財産をどなたかに遺贈する旨、遺言書を書いておいたとしても、残された遺言を実行するためには、やはり動く者の存在が必要になってきます。

民法では遺言内容の実現を図る者(遺言執行者といいます)について以下のように定めています。

(遺言執行者の指定)
第千六条 遺言者は、遺言で、一人又は数人の遺言執行者を指定し、又はその指定を第三者に委託することができる。
2 遺言執行者の指定の委託を受けた者は、遅滞なく、その指定をして、これを相続人に通知しなければならない。
3 遺言執行者の指定の委託を受けた者がその委託を辞そうとするときは、遅滞なくその旨を相続人に通知しなければならない。

したがって、遺言の内容に遺言執行者の指定を含めておけば、遺言の実行が担保されるといっていいでしょう。遺言執行者となった者は、相続人に通知する義務を負うことになりますので、相続人が知らない間に遺言執行者によってすべて完結していしまうという心配はありません。

遺言執行者が行う内容については、以下のとおりに定められています。

(相続財産の目録の作成)
第千十一条 遺言執行者は、遅滞なく、相続財産の目録を作成して、相続人に交付しなければならない。
2 遺言執行者は、相続人の請求があるときは、その立会いをもって相続財産の目録を作成し、又は公証人にこれを作成させなければならない。

(遺言執行者の権利義務)
第千十二条 遺言執行者は、遺言の内容を実現するため、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務を有する。
2 遺言執行者がある場合には、遺贈の履行は、遺言執行者のみが行うことができる。
3 第六百四十四条、第六百四十五条から第六百四十七条まで及び第六百五十条の規定は、遺言執行者について準用する。

第千十二条第三項は、遺言執行者の責務について述べられている条文を列挙したものです。例えば、遺言執行者は善良な管理者の注意をもって事務処理をする義務を負うことや、遺言執行者が勝手に相続財産を使ってしまった場合の損害賠償責任などです。

遺言執行者は遺言の内容を実現するために、事務を処理するので、それを妨げる行為は相続人であっても行ってはならないことになっています。

(遺言の執行の妨害行為の禁止)
第千十三条 遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げるべき行為をすることができない。
2 前項の規定に違反してした行為は、無効とする。ただし、これをもって善意の第三者に対抗することができない。
3 前二項の規定は、相続人の債権者(相続債権者を含む。)が相続財産についてその権利を行使することを妨げない。

(遺言執行者の行為の効果)
第千十五条 遺言執行者がその権限内において遺言執行者であることを示してした行為は、相続人に対して直接にその効力を生ずる。

遺言執行人のもつ権限は遺言内容を実現させるため、大きいものといえます。そのため、遺言執行人の事務が不適切な場合や、遺言執行人が事務を行えない事情があるときは、解任や辞任の手続きを民法は備え、不要な状態を避けることができるようにしています。

(遺言執行者の解任及び辞任)
第千十九条 遺言執行者がその任務を怠ったときその他正当な事由があるときは、利害関係人は、その解任を家庭裁判所に請求することができる。
2 遺言執行者は、正当な事由があるときは、家庭裁判所の許可を得て、その任務を辞することができる。

今後の先行きの不安に対して、遺言書を残すこと、そして、遺言執行人を指定することは、一定の不安感の解消になるのではないでしょうか。遺言書や遺言執行人の内容や手続きなどご相談のある方は、お気軽に弊事務所へご連絡ください。

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