遺産分割協議はスムーズに

相続人が一人の場合は、相続財産は単独の所有となりますが、
相続人が複数の場合、相続財産の各相続人への配分を決める必要があります。

遺産分割の手続きには、

①遺言による指定分割
②協議による分割
③調停による分割
④審判による分割 

があります。

②協議による分割を遺産分割協議といいます。

相続直後に遺産を共同で所有することから、
複数相続人のことを共同相続人といいます。

民法では遺産の分割について以下のように定めています。

(遺産の分割の協議又は審判)

第九百七条 共同相続人は、次条第一項の規定により被相続人が遺言で禁じた場合
又は同条第二項の規定により分割をしない旨の契約をした場合を除き、いつでも、
その協議で、遺産の全部又は一部の分割をすることができる。

2 遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、
又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その全部又は一部の分割を
家庭裁判所に請求することができる。ただし、遺産の一部を分割することにより
他の共同相続人の利益を害するおそれがある場合におけるその一部の分割については、
この限りでない。

(遺産の分割の方法の指定及び遺産の分割の禁止)

第九百八条 被相続人は、遺言で、遺産の分割の方法を定め、
若しくはこれを定めることを第三者に委託し、又は相続開始の時から五年を超えない期間を定めて、
遺産の分割を禁ずることができる。

2 共同相続人は、五年以内の期間を定めて、遺産の全部又は一部について、
その分割をしない旨の契約をすることができる。
ただし、その期間の終期は、相続開始の時から十年を超えることができない。

3 前項の契約は、五年以内の期間を定めて更新することができる。
ただし、その期間の終期は、相続開始の時から十年を超えることができない。

4 前条第二項本文の場合において特別の事由があるときは、家庭裁判所は、
五年以内の期間を定めて、遺産の全部又は一部について、その分割を禁ずることができる
。ただし、その期間の終期は、相続開始の時から十年を超えることができない。

5 家庭裁判所は、五年以内の期間を定めて前項の期間を更新することができる。
ただし、その期間の終期は、相続開始の時から十年を超えることができない。

つまり遺産分割が禁じられていない場合には、共同相続人はいつでも遺産分割をすることができます。ただし、一定期間内に遺産分割協議が整わないことによる支障はあります。

支障について考えるにあたって、正味の遺産額という言葉をみていきます。

正味の遺産額とは、遺産総額と相続時精算課税の適用を受ける贈与財産の合計額から、
非課税財産、葬式費用および債務を控除し、相続開始前3年以内の贈与財産を加えたものです。

正味の遺産額が基礎控除額を超える場合は相続税がかかります。
そのため、相続税の申告および納税が必要となります。

申告期限は、被相続人(亡くなった人のこと)の死亡したことを知った日
(通常の場合は、被相続人の死亡の日)の翌日から10か月以内です。
申告期限までに申告と納税を行わない場合、加算税や延滞税がかかることになります。

共同相続人の場合、遺産分割協議が成立しないと申告納税ができないことになります。

被相続人の配偶者の相続税の負担軽減(1億6千万円か法定相続分のどちらか多い額までは
相続税がかからない)や小規模宅地等の特例(土地の相続税の課税価格を80%または50%に
減額できる)を利用するためにも、遺産分割協議を成立させる必要があります。

以上のように単独で相続を受ける場合や遺言で分割の指定がある場合などを除いて、
共同相続人間で遺産分割協議を一定期間内に成立させる必要性は高いです。

遺産分割協議の内容や進め方などに
ご不安やご不明な点がございましたら、
お気軽に弊事務所にご相談下さい。

          ⇓

行政書士越路雄祐事務所のホームページ