相続人を確定していくためには、戸籍を収集して被相続人の親族関係を整理する必要があります。戸籍に記載する事項に関して、戸籍法により以下のように定められています。
第十三条 戸籍には、本籍の外、戸籍内の各人について、左の事項を記載しなければならない。
一 氏名
二 出生の年月日
三 戸籍に入った原因及び年月日
四 実父母の氏名及び実父母との続柄
五 養子であるときは、養親の氏名及び養親との続柄
六 夫婦については、夫又は妻である旨
七 他の戸籍から入った者については、その戸籍の表示
八 その他法務省令で定める事項
被相続人の出生や結婚、死亡によって、戸籍に入ったり(入籍といいます)、出たり(除籍といいます)していきます。被相続人の生きてきたすべての経過を辿る結果、戸籍が複数存在することはよくあることだと思います。被相続人の記載されている戸籍をすべて集めて確認することによって、関係者(相続人と推定される者)を特定できることになります。
戸籍を収集し、確認していく際、気をつけたい点があります。
はじめに気をつけることは、戸籍を証明する書面には種類があることです。種類には、戸籍謄本、戸籍抄本、記載事項証明書があります。
戸籍謄本とは、役所で保管している戸籍の原本全部を写した書面をいいます。戸籍謄本では戸籍に記載されている全員の内容について知ることができます。
戸籍抄本とは、戸籍の原本の一部のみを写した書面をいいます。戸籍抄本では、特定された個人の内容についてのみ知ることができます。
タイプや手書きされていた戸籍がコンピュータ化され、戸籍のコンピュータ化された市区町村で交付する戸籍に関する書面のことを記載事項証明書といいます。
従来の戸籍謄本として交付する書面としたものとして全部記載事項証明書、戸籍抄本として交付する書面としたものとして個人事項証明書があります。
以上の書面の内容から相続調査で必要となるものは、戸籍謄本や全部事項証明書となります。
次に、戸籍の書面の種類とは別に気をつけたい点として、戸籍法の改正に伴って戸籍の形式が変更となっているため、確認する事項の記載位置がずれや不記載があるということです。
現在の形式は、戸籍法により以下のように作るものとされています。
第六条 戸籍は、市町村の区域内に本籍を定める一の夫婦及びこれと氏を同じくする子ごとに、これを編製する。ただし、日本人でない者(以下「外国人」という。)と婚姻をした者又は配偶者がない者について新たに戸籍を編製するときは、その者及びこれと氏を同じくする子ごとに、これを編製する。
戦後の新民法に基づいて昭和23年以降に作られた戸籍を現行戸籍といいます。現行戸籍では、一の夫婦と同氏の未婚の子を基本単位として戸籍は作られ、複数の家族(祖父母や兄弟の家族など)が一緒に記載されることはありません。三代戸籍の禁止といわれるものです。
戦前の旧法の下では、家制度や家督相続が中心なものとして戸籍は作られてきました。戸籍法の改正により形式は変更されていて、改正年を基準に、明治5年式戸籍、明治19年式戸籍、明治31年式戸籍、大正4年戸籍と呼ばれています。これらの戸籍をまとめて旧法戸籍といいます。
旧法戸籍では、戸主(一家の代表者であり、権限をもっている者)を中心とした戸籍が作られてきました。
旧法での戸主には家族に対して強い権限がありました。戸主は家長として家族の婚姻や縁組などの同意権が認められていて、戸主の同意を得ずに結婚した者は戸籍から除くことができました。
家督相続とは、戸主の死亡又は隠居によって、戸主の地位と家の財産は家督を相続する者(基本的には長男)が単独で承継するものです。現在の個人単位としてみていく相続とは全く違った相続の有り様でした。
旧法の家制度にある言葉としては、本家や分家、隠居、廃家などがあります。今でも高齢者の方が時々口にされることがあると思いますが、こうした言葉も旧法から来ていて、かつては実体としての意味があったことを知ることはとても興味深いことです。
戸籍を証明する書面の種類や戸籍の形式に注意を払いながら相続調査をすることの重要性は分かるかと思います。相続調査や戸籍などでその他関心のあることがございましたら、お気軽に弊事務所へご連絡ください。
⇓