軽微な建設工事(請負代金の額が500万円未満)を請け負う業者に対しては、建設業法では建設業許可までは求めていません。
建設業法 第三条
建設業を営もうとする者は、(中略)二以上の都道府県の区域内に営業所(本店又は支店若しくは政令で定めるこれに準ずるものをいう。以下同じ。)を設けて営業をしようとする場合にあっては国土交通大臣の、一の都道府県の区域内にのみ営業所を設けて営業をしようとする場合にあっては当該営業所の所在地を管轄する都道府県知事の許可を受けなければならない。ただし、政令で定める軽微な建設工事のみを請け負うことを営業とする者は、この限りでない。
(以下、略)
しかし、建設業許可なしで軽微な建設工事に携わることについては、注意を要する点があります。
一つ目は、専門工事に関わるとき、その専門工事に関する法律の規制を受けることです。
二つ目は、建設業許可業者ではないことによる社会的信用力の問題です。
各専門工事として、電気工事業と解体工事業について考えていきます。
つまり、電気工事業や解体工事業のうち請負金額500万未満のみに関わる場合を想定します。
電気工事業は、電気工事業の業務の適正化に関する法律(以下、電気工事業法と呼びます)による規制を受けます。
電気工事業法の目的としては以下のとおりです。
電気工事業法 第一条
この法律は、電気工事業を営む者の登録等及びその業務の規制を行うことにより、その業務の適正な実施を確保し、もつて一般用電気工作物等及び自家用電気工作物の保安の確保に資することを目的とする。
業務の適正な実施及び工作物の保安の確保のために、事業者に対して登録を求めています。
電気工事業法 第三条
電気工事業を営もうとする者(中略)は、二以上の都道府県の区域内に営業所(電気工事の作業の管理を行わない営業所を除く。以下同じ。)を設置してその事業を営もうとするときは経済産業大臣の、一の都道府県の区域内にのみ営業所を設置してその事業を営もうとするときは当該営業所の所在地を管轄する都道府県知事の登録を受けなければならない。
(以下、略)
軽微な建設工事として請け負うとしても、電気工事業の場合は登録が必要です。
次に、解体工事業をみていきます。解体工事業を規制する法律は、建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律(以下、建設リサイクル法と呼びます)
建設リサイクル法においても目的をみていきます。
建設リサイクル法 第一条
この法律は、特定の建設資材について、その分別解体等及び再資源化等を促進するための措置を講ずるとともに、解体工事業者について登録制度を実施すること等により、再生資源の十分な利用及び廃棄物の減量等を通じて、資源の有効な利用の確保及び廃棄物の適正な処理を図り、もって生活環境の保全及び国民経済の健全な発展に寄与することを目的とする。
この法律でも、資源の有効利用や適正処理を図るために、解体工事業者に登録を求めています。
建設リサイクル法 第二十一条
解体工事業を営もうとする者(建設業法別表第一の下欄に掲げる土木工事業、建築工事業又は解体工事業に係る同法第三条第一項の許可を受けた者を除く。)は、当該業を行おうとする区域を管轄する都道府県知事の登録を受けなければならない。
(以下、略)
上記のかっこ内には、特定の業種の建設業許可を受けた業者は除くとあります。つまり、建設業許可を受けていない事業者は登録を受ける必要があります。
電気工事業と解体工事業をみてきましたが、特定の業種については軽微な建設工事を請負う場合でも、建設業許可のない事業者は登録をしなければならないということです。
社会的な信用は、個人客や元請との関係を考えるとき、大きな問題になることがあるかもしれません。
個人客からリフォーム工事(請負代金500万円未満)を請け負う場合を考えてみます。個人客が全額キャッシュで支払える場合は特に問題は生じないかもしれません。もし、キャッシュではなく、金融機関からローンを組んで請負代金に支払う場合はどういう事態が想定され得るでしょうか。金融機関は融資先の状況に細心の注意を払うことでしょうから、融資判断をする際にリフォーム工事を行う建設工事業者が許可業者であるか、リフォーム工事を行うに適した種別の建設業許可であるかは確認すると思います。その事業者が建設業許可を受けていない状態からは、金融機関の融資判断へプラスに働くことはないでしょう。
次に、元請との関係をみていきます。元請業者が下請業者を選定する時、コンプライアンス遵守が以前より求められています。そのため、建設業許可のない業者は下請取引先から外されたり、下請業者自身が建設業許可を取得するよう強く要請されることがあると思います。
以上、軽微な工事のみを請け負って事業を行っていこうと考えていても、いろいろな不都合が生じることが分かるかと思います。今後、建設業許可など考えている方は、お気軽に弊事務所へご連絡ください。
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