補助人が必要とされる対象者としては、民法第十五条で以下のように定められています。
(補助開始の審判)
第十五条 精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人又は検察官の請求により、補助開始の審判をすることができる。ただし、第七条又は第十一条本文に規定する原因がある者については、この限りでない。
2 本人以外の者の請求により補助開始の審判をするには、本人の同意がなければならない。
3 補助開始の審判は、第十七条第一項の審判又は第八百七十六条の九第一項の審判とともにしなければならない。
第七条の規定は成年後見人に関してのものです。
補助人は、精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者(被補助人といいます)のために、財産管理や身上保護を図る役割を担うことになります。
ただし、被補助人は、その他の後継類型である被保佐人や被後見人と比較すると、本人の判断能力はある程度保たれている状況と考えられますので、補助人の権限には、限定されたものといえます
補助人の同意権・取消権について、民法第十七条に定められています。また、具体的な項目については民法第十三条第一項で定められた行為(保佐人の同意を要する行為とされています)の一部に限定されます。
(補助人の同意を要する旨の審判等)
第十七条 家庭裁判所は、第十五条第一項本文に規定する者又は補助人若しくは補助監督人の請求により、被補助人が特定の法律行為をするにはその補助人の同意を得なければならない旨の審判をすることができる。ただし、その審判によりその同意を得なければならないものとすることができる行為は、第十三条第一項に規定する行為の一部に限る。
2 本人以外の者の請求により前項の審判をするには、本人の同意がなければならない。
3 補助人の同意を得なければならない行為について、補助人が被補助人の利益を害するおそれがないにもかかわらず同意をしないときは、家庭裁判所は、被補助人の請求により、補助人の同意に代わる許可を与えることができる。
4 補助人の同意を得なければならない行為であって、その同意又はこれに代わる許可を得ないでしたものは、取り消すことができる。
(保佐人の同意を要する行為等)
第十三条 被保佐人が次に掲げる行為をするには、その保佐人の同意を得なければならない。ただし、第九条ただし書に規定する行為については、この限りでない。
一 元本を領収し、又は利用すること。
二 借財又は保証をすること。
三 不動産その他重要な財産に関する権利の得喪を目的とする行為をすること。
四 訴訟行為をすること。
五 贈与、和解又は仲裁合意(仲裁法(平成十五年法律第百三十八号)第二条第一項に規定する仲裁合意をいう。)をすること。
六 相続の承認若しくは放棄又は遺産の分割をすること。
七 贈与の申込みを拒絶し、遺贈を放棄し、負担付贈与の申込みを承諾し、又は負担付遺贈を承認すること。
八 新築、改築、増築又は大修繕をすること。
九 第六百二条に定める期間を超える賃貸借をすること。
十 前各号に掲げる行為を制限行為能力者(未成年者、成年被後見人、被保佐人及び第十七条第一項の審判を受けた被補助人をいう。以下同じ。)の法定代理人としてすること。
ここにある第九条ただし書きとは、日用品の購入その他日常生活に関する行為については補助人の同意は不要としたものです。
また、第六百二条の賃貸借期間は以下のように定められています。
(短期賃貸借)
第六百二条 処分の権限を有しない者が賃貸借をする場合には、次の各号に掲げる賃貸借は、それぞれ当該各号に定める期間を超えることができない。契約でこれより長い期間を定めたときであっても、その期間は、当該各号に定める期間とする。
一 樹木の栽植又は伐採を目的とする山林の賃貸借 十年
二 前号に掲げる賃貸借以外の土地の賃貸借 五年
三 建物の賃貸借 三年
四 動産の賃貸借 六箇月
民法第十一項第一項のすべてを選択することは、本人の能力が被保佐人に対する同意権・取消権と変わらなくなってしまいます。被補助人は被保佐人より自分でできることは多いはずですので、全部選択することは適当ではありません。
補助の申立てをすること自体、本人以外の者がする場合、本人の同意が必要となります。十分に本人と相談して同意権・取消権とすべき項目を選択する必要があります。
選択した同意を要する法律行為を補助人の同意を得ずに行った場合、取り消すことができます。補助人は限定された範囲で取消権があります。
補助人にどのような代理権を与えるかの制限はありませんが、裁判所が申立用に代理行為目録を用意しています。この代理行為目録の中から、補助人の代理権として必要とされるものを選んでいきます。
代理行為目録は、財産管理関係、相続関係、身上保護関係などにより区分けされています。詳細な内容は以下のとおりです。
1 財産管理関係
〇不動産関係
・本人の不動産に関する(売却、担保権設定、賃貸、警備など)契約の締結、更新、変更及び解除
・他人の不動産に関する(購入、借地、借家)契約の締結、更新、変更及び解除
・住居等の(新築、増改築、修繕(樹木の伐採等を含む。)、解体など)に関する請負契約の締結、変更及び解除
・本人又は他人の不動産内に存する本人の動産の処分
〇預貯金等金融関係
・預貯金及び出資金に関する金融機関等との一切の取引(解約(脱退)及び新規口座の開設を含む。)
・預貯金及び出資金以外の本人と金融機関との取引(貸金庫取引、証券取引、保護預かり取引、為替取引、信託取引など)
〇保険に関する事項
・保険契約の締結、変更及び解除
・保険金及び賠償金の請求及び受領
〇その他
・以下の収入の受領及びこれに関する諸手続
(家賃、地代、年金、障害手当、生活保護その他の社会保障給付、臨時給付金その他の公的給付、配当金など)
・以下の支出及びこれに関する諸手続
(家賃、地代、公共料金、保険料、ローンの返済金、管理費等、公租公課など)
・情報通信(携帯電話、インターネット等)に関する契約の締結、変更、解除及び費用の支払
・本人の負担している債務に関する弁済合意及び債務の弁済(そのための調査を含む。)
・本人が現に有する債権の回収(そのための調査・交渉を含む。)
2 相続関係
・相続の承認又は放棄
・贈与又は遺贈の受諾
・遺産分割又は単独相続に関する諸手続
・遺留分減殺請求又は遺留分侵害額請求に関する諸手続
3 身上保護関係
・介護契約その他の福祉サービス契約の締結、変更、解除及び費用の支払並びに還付金等の受領
・介護保険、要介護認定、障害支援区分認定、健康保険等の各申請(各種給付金及び還付金の申請を含む。)及びこれらの認定に関する不服申立て
・福祉関係施設への入所に関する契約(有料老人ホームの入居契約等を含む。)の締結、変更,解除及び費用の支払並びに還付金等の受領
・医療契約及び病院への入院に関する契約の締結、変更、解除及び費用の支払並びに還付金等の受領
4 その他
・税金の申告,納付,更正,還付及びこれらに関する諸手続
・登記・登録の申請
・個人番号(マイナンバー)に関する諸手続
・住民票の異動に関する手続
・家事審判手続,家事調停手続(家事事件手続法24条2項の特別委任事項を含む。),訴訟手続(民事訴訟法55条2項の特別委任事項を含む。),民事調停手続(非訟事件手続法23条2項の特別委任事項を含む。)及び破産手続(免責手続を含む。)
※ 保佐人又は補助人が上記各手続について手続代理人又は訴訟代理人となる資格を有する者であるときに限ります。
・上の各手続について,手続代理人又は訴訟代理人となる資格を有する者に委任をすること
5 関連手続
・以上の各事務の処理に必要な費用の支払
・以上の各事務に関連する一切の事項(戸籍謄抄本・住民票の交付請求、公的な届出、手続等を含む。)
補助人は与えられた同意権・取消権や代理権をもとに、被補助人の日常生活をサポートしていきます。補助人などに関してご質問がある方は、お気軽に弊事務所へご連絡ください。
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