認知症などで判断能力が低下すると、日常生活の中で支障となる場面が増えていきます。
ご本人を支えるために、後見制度は活用できると思います。
後見人の責務としては、被後見人(判断能力の低下により、第三者の助けが必要な方で、
家庭裁判所から後見人をつけるよう決定が下った者のことを指します)の財産を守ることが第一です。
したがって、被後見人の財産を用いて、積極的に財産の運用を行うことができません。
例えば、被後見人がアパートを所有していた場合、アパートの老朽化を改善するため、
その建物や設備を更新しようとすることを、
後見人が裁判所から許可を得ることは難しいのではないでしょうか。
また、裁判所は後見人等として親族以外の専門職(弁護士、司法書士、社会福祉士など)を
選任する傾向が高いです。
そのため、家族ではない他人が家族の中に入ってくるので、
今まで通りの家族中心の生活を送り続けることは難しくなるでしょう。
後見制度では十分対応できない点があることを踏まえて、
必要に応じては家族信託の検討をしてみてもいいのではないでしょうか。
家族信託は、自分の財産を信頼できる家族に託す制度です。
家族信託は信託法で以下のように定められています。
信託法第3条第1号
特定の者との間で、当該特定の者に対し財産の譲渡、担保権の設定その他の財産の処分を
する旨並びに当該特定の者が一定の目的に従い財産の管理又は処分及びその他の当該目的の
達成のために必要な行為をすべき旨の契約(以下「信託契約」という。)を締結する方法
信託法第4条
前条第1号に掲げる方法によってされる信託は、委託者となるべき者と受託者となるべき者
との間の信託契約の締結によってその効力を生ずる。
委託者とは、自分の財産を託す者のことを指します。
受託者とは、委託者の財産を預かり委託者の意向や目的に沿って働く者のことです。
信託法第26条
受託者は、信託財産に属する財産の管理又は処分及びその他の信託の目的の達成のために
必要な行為をする権限を有する。
委託者の財産を家族信託の目的によって利益を得る者が受益者です。
家族信託の仕組みを整理しますと、
委託者の財産を、受託者が信託目的に沿って活用することで、受益者が利益を受けるというものです。
委託者と受益者との関係は同一のものもありますし、別々のものもあります。
委託者と受益者は同一になる場合の例として、
判断能力の低下を心配した父親(=委託者)が息子(=受託者)に預けて、
父親(=受益者)の生活の面倒をみる場合などです。
委託者と受益者が別々になる場合の例として、
判断能力の低下を心配した父親(=委託者)が息子(=受託者)に預けて、
母親(=受益者)の生活の面倒をみる場合などがあげられます。
注意を要する点として、信頼した家族といえども何か間違いを起こす可能性はあります。
こうした場合に備えるものとして、費用はかかりますが、
信託監督人や受益者代理人をおくという対策をとることができます。
後見制度と家族信託を費用面を比較してみます。
後見制度では、弁護士などの専門職が後見人等になった場合、
年間20~80万円の報酬が発生します。
被後見人等が亡くなるまで、報酬は払い続ける必要があります。
一方、家族信託では、初期費用として40~100万円かかりますが、
委託者が家族で無報酬の場合であれば年間の報酬は発生しません。
総合的にみると、家族信託の方が後見制度より安価になる場合が多いのではないかと思います。
以上見てきたように
皆さまの中には、家族信託を検討した方が
より望ましい解決策を
みつけることができるかもしれません。
家族信託の内容や手続きなどに
関心のある方は、
お気軽に弊事務所にご連絡ください。
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