ご本人や家族、その他関係者から申立てを行うことで、家庭裁判所によって適切と判断された者を後見人等として選任して、法定後見は開始されます。
法定後見人等とは、後見人や保佐人、補助人のことです(以下、後見人と略します)。
後見人は、基本的には判断能力の低下した者(被後見人といいます)のために
法律行為を行うものです。
法律行為という言葉の意味が分かりにくいかもしれません。
一例として、物の取引についてみてみましょう。
ある物を欲しいと思う人(A)は、その物を売る人(B)に対して「買う!」と言って、
Bに代金を支払い、その物を引き渡してもらい、Aはその物を手に入れることができます。
この取引を法律行為という用語を使用して説明してみますと、
法律行為とは、行為者(ここでは、Aに注目します)が法律上の一定の効果を生じさせようと意図して
意思表示を行い、意図したとおりに結果が生じる行為(Bから物を購入する)をいいます。
後見人が行うとされる法律行為は財産管理と身上監護に分けられます。
後見人の法律行為には、身上配慮義務が課されています。
(成年被後見人の意思の尊重及び身上の配慮)
第八百五十八条 成年後見人は、成年被後見人の生活、療養看護及び財産の管理に関する
事務を行うに当たっては、成年被後見人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態及び生活
の状況に配慮しなければならない。
財産管理を目的とする法律行為については以下があげられています。
ア 預貯金の管理・払戻等
イ 不動産その他重要な財産の処分とこれらに関連する登記・供託等の公法上の行為、
不動産売買、賃貸借契約の締結・解除、担保権の設定等
ウ 遺産分割等
『支援者のための成年後見活用講座 第3版』(日本社会福祉会、2020年) 45pより引用
身上監護を目的とする法律行為については以下のとおりです。
ア 健康診断等の受診、治療・入院等に対する契約の締結、費用の支払い等
イ 本人の住居の確保に関する契約の締結、費用の支払い等
ウ 福祉施設等の入退所に関する契約の締結、費用の支払い等、
及びそこでの処遇の監視・異議申立て等
ヱ 介護を依頼する行為及び介護・生活維持に関連して必要な契約の締結費用の支払い等、
社会保障給付の利用等
オ 教育・リハビリに関する契約の締結、費用の支払い等
『支援者のための成年後見活用講座 第3版』(日本社会福祉会、2020年) 45pより引用
ここで注意しなければならないのは、後見人は介護などの行為
(法律行為に対して、事実行為といいます)をする者ではないということです。
事実行為に関しては、後見人はサービスの手配などの調整を担うものです。
事実行為に直接的な関与はしないとしても、
以上みてきたように、財産管理と身上監護をとおして被後見人に対して、
後見人は幅広い支援をすることができます。
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