法定後見制度を行うためには、家庭裁判所に後見等の開始の審判申立てをしなければなりません。
後見等とは、補助、保佐、後見の三類型を含んだものです。判断能力の不十分さが著しさの程度によって、軽い方から補助、保佐、そして一番重いものとして後見と類型化されます。
では、一体誰が申立人となることができるのでしょうか。
民法は、補助、保佐、後見開始の審判について以下のように定めています。
まずは、補助開始の審判です。
第十五条 精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、保佐人、保佐監督人又は検察官の請求により、補助開始の審判をすることができる。ただし、第七条又は第十一条本文に規定する原因がある者については、この限りでない。
2 本人以外の者の請求により補助開始の審判をするには、本人の同意がなければならない。
次に、保佐開始の審判です。
第十一条 精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分である者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、後見人、後見監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、保佐開始の審判をすることができる。ただし、第七条に規定する原因がある者については、この限りでない。
最後に、後見開始の審判です。
第七条 精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く常況にある者については、家庭裁判所は、本人、配偶者、四親等内の親族、未成年後見人、未成年後見監督人、保佐人、保佐監督人、補助人、補助監督人又は検察官の請求により、後見開始の審判をすることができる。
三類型共通して、本人、配偶者、四親等内の親族、検察官、審判する対象以外の後見等人および後見等監督人です。ただし、補助開始の審判を本人以外の者により請求する場合は、本人の同意が必要とされます。
民法に定めた審判申立人以外は認められていないのかというと、そういう訳ではありません。
老人福祉法、知的障害者福祉法、精神保健及び精神障害者福祉に関する法律が、別のルートを用意しています。
老人福祉法は以下のとおり定めています。
第三十二条 市町村長は、六十五歳以上の者につき、その福祉を図るため特に必要があると認めるときは、民法第七条、第十一条、第十三条第二項、第十五条第一項、第十七条第一項、第八百七十六条の四第一項又は第八百七十六条の九第一項に規定する審判の請求をすることができる。
知的障害者福祉法は以下のとおり定めています。
第二十八条 市町村長は、知的障害者につき、その福祉を図るため特に必要があると認めるときは、民法第七条、第十一条、第十三条第二項、第十五条第一項、第十七条第一項、第八百七十六条の四第一項又は第八百七十六条の九第一項に規定する審判の請求をすることができる。
精神保健及び精神障害者福祉に関する法律は以下のとおり定めています。
第五十一条の十一の二 市町村長は、精神障害者につき、その福祉を図るため特に必要があると認めるときは、民法(明治二十九年法律第八十九号)第七条、第十一条、第十三条第二項、第十五条第一項、第十七条第一項、第八百七十六条の四第一項又は第八百七十六条の九第一項に規定する審判の請求をすることができる。
これらの法律では、民法で定めた申立人以外にも、市町村長が後見等審判開始の申立することができるとしています。親族と疎遠で、長く一人暮らしをし、何らかの障害を抱えている方に対しても、住所地の市町村長が後見等の必要性を認めて申立てを行うことは可能になっています。
後見制度の審判の申立人について上記のとおり説明しました。
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