
判断能力の低下がみられ、第三者の援助が必要とされる方に対して、成年後見制度を利用することは時に必要となることがあるでしょう。
成年後見制度を利用するということは、成年後見人には障害者の代理権を与えるものです。よって、代理権を適切に行使する義務が成年後見人にはあります。
制度の出発点を振り返りますと、成年後見制度は介護保険制度と同じ時期にスタートしています。しかし、介護保険制度の利用状況と比較すると、成年後見制度は十分利用されているとはいえない状況です。十分利用されていない理由の一つとして、第三者が代理権を有することに対する不安があるように思います。
適切な代理権の行使を、成年後見制度の利用の促進に関する法律第三条第一項において基本理念を基づいて行うよう示しています。
成年後見制度の利用の促進は、成年被後見人等が、成年被後見人等でない者と等しく、基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられ、その尊厳にふさわしい生活を保障されるべきこと、成年被後見人等の意思決定の支援が適切に行われるとともに、成年被後見人等の自発的意思が尊重されるべきこと及び成年被後見人等の財産の管理のみならず身上の保護が適切に行われるべきこと等の成年後見制度の理念を踏まえて行われるものとする。
成年後見制度が広く一般の方に信頼をもって利用されていくためには、基本理念で掲げられている意思決定の支援が必要不可欠であるといえます。
意思決定支援ワーキング・グループ(メンバーには最高裁判所、厚生労働省及び専門職団体(日本弁護士連合会、公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート及び公益社団法人日本社会福祉士会)からなります)が、令和2年に、「意思決定支援を踏まえた後見事務のガイドライン」をまとめて公表しています。
このガイドラインでは、意思決定の中心に本人を置くという本人中心主義を実現するための7つの基本原則を提示しています。
本ガイドラインにおける意思決定支援及び代行決定のプロセスの原則
(1) 意思決定支援の基本原則
第1 全ての人は意思決定能力があることが推定される。
第2 本人が自ら意思決定できるよう、実行可能なあらゆる支援を尽くさなければ、代行決定に移ってはならない。
第3 一見すると不合理にみえる意思決定でも、それだけで本人に意思決定能力がないと判断してはならない。
(2) 代行決定への移行場面・代行決定の基本原則
第4 意思決定支援が尽くされても、どうしても本人の意思決定や意思確認が困難な場合には、代行決定に移行するが、その場合であっても、後見人等は、まずは、明確な根拠に基づき合理的に推定される本人の意思(推定意思)に基づき行動することを基本とする。
第5 ①本人の意思推定すら困難な場合、又は②本人により表明された意思等が本人にとって見過ごすことのできない重大な影響を生ずる場合には、後見人等は本人の信条・価値観・選好を最大限尊重した、本人にとっての最善の利益に基づく方針を採らなければならない。
第6 本人にとっての最善の利益に基づく代行決定は、法的保護の観点からこれ以上意思決定を先延ばしにできず、かつ、他に採ることのできる手段がない場合に限り、必要最小限度の範囲で行われなければならない。
第7 一度代行決定が行われた場合であっても、次の意思決定の場面では、第1原則に戻り、意思決定能力の推定から始めなければならない。
後見業務に関わる支援者は、本人のためになるからと判断して援助決定することがあるかもしれません。しかし、こうした代行決定する前に、本人の意思決定ができるよう十分支援しなければならないのです。いわば、最善の利益が最優先するわけではありません。
ここでいう意思と意志をはっきり区別する必要があります。意志とは、一貫して揺るぎない決意などの意味がありますが、意思は揺らぐものです。日常生活の中で、今日は何を食べたいか考えてみますと、お寿司であったり、カレーであったり、その気持ち(意思)はふらふらと揺らぎます。そうした意思を表せるよう、障害者本人に対しての働きかけが大切な要素になっていきます。
意思決定支援を踏まえた後見制度を利用することは、本人にも支援者にとっても、お互い尊重しあった日常生活をつくり出していくのではないかと思います。
成年後見等に関して、気になることがございましたら、お気軽に弊事務所へお問い合わせください。
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