認知症高齢者や知的障害者、精神障害者に対して、日常の判断能力の低下等などにより、一定程度、他者からの支援が必要であると思われた時、親族をはじめとする関係者の方が、成年後見の利用を検討することはあるかと思います。成年後見制度を利用するにあたって、利用開始までに至る大まかな流れを今回ご紹介します。
まずは、親族など(申立人といいます)が家庭裁判所に法定後見の申立書を提出することから始まります。
申立書を受けた後、家庭裁判所は以下について確認していきます。
・本人の心身の状態ならびに生活および財産の状況
・成年後見人等の候補者の職業および経歴
・成年後見人等の候補者と本人との利害関係の有無
・本人の意見
・その他一切の事情
(三訂 成年後見実務マニュアル(2022年)、中央法規、52pからの引用)
審判が下りると、審判書が関係者に送られてきます。審判書を受け取ってから二週間経過し、その間に関係者からの不服申し立てがないと、審判が確定します。ただし、成年後見人の選任の審判は家庭裁判所の職権により行われるため、不服申し立てをすることは出来ないとされています。
審判が確定することに至って、候補者から成年後見人への選任が確定することになります。確定すると、裁判所から東京法務局に対して、後見等開始及び後見人等選任の登記の嘱託が行われます。審判確定から登記完了までは約二週間かかるとされています。
後見人候補者が審判書を受け取ってからを基準とすると、一か月ほど登記完了するまで要することとなります。登記完了が済むと、登記事項証明書(後見人であることを証明するものです)を取得することが可能となります。
審判書到達から関係者等との連絡調整を後見人候補者として行い、確定後、後見人は被後見人や関係者と面談や打ち合わせ、必要な資料の提供を受けるなど行っていきます。
さらに、後見人が登記事項証明書を取得した後は、金融機関などへ必要な資料提供を求め、初回報告として財産目録と年間収支予定表を作成し、定められた提出期限までに家庭裁判所へ提出するという流れになります。
初回報告は後見事務のベースとなるものです。これを踏まえて、被後見人に対して必要なサポート(身上監護や財産管理など)を後見人は行っていきます。
初回報告提出後、一定期間が経過すると、家庭裁判所は後見人に対して定期報告を求めます。初回報告と定期報告による変化を家庭裁判所がチェックして、後見人が妥当な支援を行っているかどうかの確認をしていきます。
以上、申立から後見開始までの簡単な流れを説明しました。成年後見制度の内容など、ご不明やお問い合わせのある方はお気軽に弊事務所へご連絡ください。
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