ご自分やご家族が施設入所や病院へ入院する時、
身元保証人・身元引受人を求められる経験をしたことが
あるのではないでしょうか。
何となく自分の家族だからと思って、
身元を保証するのは当然だろうというくらいの感覚で
身元保証契約書にサインすることが普通のことと思います。
ここで身元保証人(身元引受人も同じ意味で以下扱います)について考えていきます。
身元保証人については、
「身元保証二関スル法律」(昭和8年法律第42号)第1条
被用者ノ行為二因リ使用者ノ受ケタル損害ヲ賠償スルコトヲ約スル身元保証
とあります。
基本的に、法律上の使用者とは会社、被用者とは雇用人を指すと想定されます。
会社が人を雇う時に、採用した者が会社に損害を与えた場合の賠償義務を確保する
目的で締結される保証契約といえるものです。
身元保証人には、通常は両親や親族がなることが多いです。
「身元保証二関スル法律」の被用者と使用者との関係を、
入所や入院時に求める身元保証人は適用されているものと思います。
こうした適用は全く問題がないという訳ではありません。
特別養護老人ホーム・介護老人保健施設への入所や、
病院への入院に身元保証契約を求めることは、
厚生省令違反や医師法違反にあたる疑いはあります。
ただ、慣例として現在も通常手続きの一環として広く行われているのが現状かと思います。
平成11年厚生省令第46号
指定介護老人福祉施設の人員、設備及び運営に関する基準第4条の2
(提供拒否の禁止)
指定介護老人福祉施設は、正当な理由なく指定介護福祉施設サービスの
提供を拒んではならない。
平成11年厚生省令第40号
介護老人保健施設の人員、設備及び運営に関する基準第5条の2
(提供拒否の禁止)
介護老人保健施設は、正当な理由なく介護保健施設サービスの提供を
拒んではならない。
医師法第19条
(応召義務等)
診療に従事する医師は、診察治療の求があった場合には、
正当な事由がなければこれを拒んではならない
身元保証人を見つけることが出来る人は問題がないのかもしれません。
しかし、独居高齢者の方など頼ることができる親族を見つけられない方にとっては、
入所や入院の支障になるのではないかとの不安は高まります。
頼れる身寄りを見つけられない方にとって、
民間事業者が提供している身元保証サービスが不安感を
解消することが出来るかもしれません。
ただし、身元保証サービス提供事業者への監督官庁などからの監督が
十分とはいえない面があり、事業者の不祥事が報道されることがありました。
まだ十分に安心して利用できるサービスとはいえない現状があるのではないでしょうか。
成年後見制度を利用すれば、成年後見人が身元保証まで行ってもらえて
問題が解決するのでしょうか。
しかし、成年後見人は身元保証人となるべきではないとされています。
身元保証の責任範囲が明確ではない責任を成年後見人が負うリスクが
生じることが一点です。
また、成年後見人が身元保証人としての責任として賠償義務を負った場合、
成年被後見人へ賠償で支払った金銭等を請求できることになります。
成年被後見人の財産を守るべき成年後見人としての職責に相反する
といったことが生じる問題が生じる可能性もあるのです。
ただし、成年後見人としての範囲で行えることを懇切丁寧に説明することで、
施設や病院の関係者の受け入れに対しての不安感を解消し、
保証契約を結ばなくても入所や入院に至ったケースはあります。
一人世帯が増えた現在、親族関係が希薄な方は少なくないと思います。
身元保証人の問題は入所や入院の支障となり得ます。
不安感の一つの解消策として、
成年後見制度の内容をよく知って頂ければと思います。
成年後見制度によってすべてを解決するものではありませんが、
一助になるものではないかと思います。
成年後見制度の内容などご不明な点がございましたら、
お気軽に弊事務所にお問い合わせください。
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