
介護保険と成年後見は車の両輪と例えられます。介護サービスを介護保険で提供し、介護サービス契約などの手助けなどを成年後見が担うものと期待されています。
介護サービス契約などの手助けなどと例を挙げましたが、成年後見人の責務としては民法では以下のように定められています。
第八百五十八条 成年後見人は、成年被後見人の生活、療養看護及び財産の管理に関する事務を行うに当たっては、成年被後見人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければならない。
この条文から、財産管理や身上監護について責務を負うものであるといえます。
しかし、身上監護に関する法的権限を後見人は十分備えていないとして、実務上支障になる場面が起きています。
よく見られるものとして、医療同意と身元保証を求められた場面です。後見人にはこうした同意をすることに法的に権限があるとはいえない事情があります。
医療同意とは、医師によるインフォームドコンセントの相手方としての役割を後見人に求めるものです。治療方針、手術の可否、身体拘束などです。慣例で家族に求めているものです。しかし、元来、自身の身体的侵襲行為に対して、家族を含めた他人が同意する権限が法定されている訳ではありません。
身元保証に関しては、利用料の弁済や身柄引受などを求めるものです。この場合、家族などの立場であれば、その判断によりますが、自分の財産から充当することや、亡骸を引き取って葬儀をすることに不自然さはないかもしれません。しかし、後見人が利用者の支払いを肩代わりする行為は、結果的に利用者に請求することになります。利用者の財産を守るべき立場と矛盾し、利益相反行為といえるものとなります。後見人の利益相反については、以下の民法のとおりです。
第八百六十条 第八百二十六条の規定は、後見人について準用する。ただし、後見監督人がある場合は、この限りでない。
第八百二十六条 親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。
2 親権を行う者が数人の子に対して親権を行う場合において、その一人と他の子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その一方のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。
亡骸の引取りについては、死後の事務に関する事柄となります。民法では以下のように後見人の権限について述べています。
第八百七十三条の二 成年後見人は、成年被後見人が死亡した場合において、必要があるときは、成年被後見人の相続人の意思に反することが明らかなときを除き、相続人が相続財産を管理することができるに至るまで、次に掲げる行為をすることができる。ただし、第三号に掲げる行為をするには、家庭裁判所の許可を得なければならない。
一 相続財産に属する特定の財産の保存に必要な行為
二 相続財産に属する債務(弁済期が到来しているものに限る。)の弁済
三 その死体の火葬又は埋葬に関する契約の締結その他相続財産の保存に必要な行為(前二号に掲げる行為を除く。)
多くの場合、必要があるときに該当すると思います。しかし、後見人が契約締結などの法律行為以外の事実行為(亡骸の引取りも含むと思います)についての法的権限が与えられている状況とはいえません。権限のない中、緊急窮迫な状況に後見人は対処しているのではないでしょうか。
後見人に期待されていることと、実際の権限との間には溝があります。その中でも後見人は利用者のQOLの向上に配慮しながら支援を行っています。後見人について、その他ご質問がある方はお気軽に弊事務所へご連絡ください。
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