障害者サービスの生活介護の指定要件

生活介護とは、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(以下、障害者総合支援法と略します)により定められた障害福祉サービスの一つです。自宅やグループホームで暮らす障害者の方を対象として、サービス事業者の施設へ日中に来てもらって、介護サービス(排泄や入浴、食事など)や日中の活動の場(創作活動や生産活動など)を提供するものです。

生活介護を受けるには障害支援区分3以上が必要です。施設入所者の場合は、障害支援区分4以上となります。50歳以上の障害者の方は、障害支援区分が緩和され、障害支援区分2以上(施設入所の場合は3以上)で利用が可能になります。

生活介護の特徴は、日常生活上の介護だけでなく、生産活動や創作的活動を提供することにあります。つまり、障害者が日常生活を送る上で必要な介護を提供するともに、さまざまな活動に取り組み、社会参加への足がかりをつくることに目的があります。

障害者総合支援法では、生活介護について以下のように定めています。

第二十九条
市町村は、支給決定障害者等が、支給決定の有効期間内において、都道府県知事が指定する障害福祉サービス事業を行う者(以下「指定障害福祉サービス事業者」という。)若しくは障害者支援施設(以下「指定障害者支援施設」という。)から当該指定に係る障害福祉サービス(以下「指定障害福祉サービス」という。)を受けたとき、又はのぞみの園から施設障害福祉サービスを受けたときは、主務省令で定めるところにより、当該支給決定障害者等に対し、当該指定障害福祉サービス又は施設障害福祉サービス(支給量の範囲内のものに限る。以下「指定障害福祉サービス等」という。)に要した費用(食事の提供に要する費用、居住若しくは滞在に要する費用その他の日常生活に要する費用又は創作的活動若しくは生産活動に要する費用のうち主務省令で定める費用(以下「特定費用」という。)を除く。)について、介護給付費又は訓練等給付費を支給する。
(以下略)

指定障害福祉サービス事業者でなければ、介護給付費が支給されないので、対象となる障害者の方は全額自己負担になってしまいます。そのため、指定を受けない事業所が利用者を獲得することはほぼ不可能といえるので、生活介護を障害福祉サービスを行いたい事業者は都道府県の指定を受ける必要があります。

第三十六条
第二十九条第一項の指定障害福祉サービス事業者の指定は、主務省令で定めるところにより、障害福祉サービス事業を行う者の申請により、障害福祉サービスの種類及び障害福祉サービス事業を行う事業所(以下この款において「サービス事業所」という。)ごとに行う。
(以下略)

第四十三条
指定障害福祉サービス事業者は、当該指定に係るサービス事業所ごとに、都道府県の条例で定める基準に従い、当該指定障害福祉サービスに従事する従業者を有しなければならない。
2 指定障害福祉サービス事業者は、都道府県の条例で定める指定障害福祉サービスの事業の設備及び運営に関する基準に従い、指定障害福祉サービスを提供しなければならない。
3 都道府県が前二項の条例を定めるに当たっては、第一号から第三号までに掲げる事項については主務省令で定める基準に従い定めるものとし、第四号に掲げる事項については主務省令で定める基準を標準として定めるものとし、その他の事項については主務省令で定める基準を参酌するものとする。
一 指定障害福祉サービスに従事する従業者及びその員数
二 指定障害福祉サービスの事業に係る居室及び病室の床面積
三 指定障害福祉サービスの事業の運営に関する事項であって、障害者又は障害児の保護者のサービスの適切な利用の確保、障害者等の適切な処遇及び安全の確保並びに秘密の保持等に密接に関連するものとして主務省令で定めるもの
四 指定障害福祉サービスの事業に係る利用定員
4 指定障害福祉サービス事業者は、第四十六条第二項の規定による事業の廃止又は休止の届出をしたときは、当該届出の日前一月以内に当該指定障害福祉サービスを受けていた者であって、当該事業の廃止又は休止の日以後においても引き続き当該指定障害福祉サービスに相当するサービスの提供を希望する者に対し、必要な障害福祉サービスが継続的に提供されるよう、他の指定障害福祉サービス事業者その他関係者との連絡調整その他の便宜の提供を行わなければならない。

障害者総合支援法では、障害者サービスの大枠を示しています。細則については、都道府県の定める条例に委ねられています。

東京都では、生活介護に関しては、東京都障害福祉サービス事業の設備及び運営の基準に関する条例(以下、条例と略します)および東京都障害福祉サービス事業の設備及び運営の基準に関する条例施行規則(以下、規則と略します)を定めています。以下に条例と規則を並べて、生活介護の細則はどのようなものとなっているかをみていきます。

1 従業者の配置の基準

従業員の配置基準については、条例および規則で以下のように定められています。

条例 第三十三条
生活介護の事業を行う者(以下「生活介護事業者」という。)は、当該事業を行う事業所(以下「生活介護事業所」という。)ごとに、次に掲げる従業者を規則で定める基準により置かなければならない。ただし、第三号の理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士を確保することが困難な場合には、日常生活を営むのに必要な機能の減退を防止するための訓練を行う能力を有する看護師その他の者を機能訓練指導員として置くことをもって、第三号の理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士に代えることができる。
一 管理者(生活介護事業所の長をいう。以下この章において同じ。)
二 医師
三 看護職員(保健師又は看護師若しくは准看護師をいう。次章において同じ。)、理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士及び生活支援員
四 サービス管理責任者

規則 第五条
条例第三十三条に規定する規則で定める基準は、次の各号に掲げる従業者の区分に応じ、当該各号に定める員数とする。
一 管理者(条例第三十三条第一号に規定する管理者をいう。) 一人
二 医師 利用者に対して日常生活上の健康管理及び療養上の指導を行うために必要な数
三 看護職員(条例第三十三条第三号に規定する看護職員をいう。以下この条、第九条及び第十一条において同じ。)、理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士及び生活支援員 次に掲げる基準を満たすために必要な数
イ 看護職員、理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士及び生活支援員の総数は、生活介護の単位(生活介護であって、その提供が同時に一人又は複数の利用者に対して一体的に行われるものをいう。以下この章及び附則第二項において同じ。)ごとに、常勤換算方法で、(1)から(3)までに掲げる利用者の平均障害支援区分(厚生労働大臣が定めるところにより算定した障害支援区分の平均値をいう。以下同じ。)に応じ、それぞれ(1)から(3)までに定める数以上とすること。

(1) 利用者の平均障害支援区分が四未満 利用者の数を六で除して得た数
(2) 利用者の平均障害支援区分が四以上五未満 利用者の数を五で除して得た数
(3) 利用者の平均障害支援区分が五以上 利用者の数を三で除して得た数
ロ 看護職員の数は、生活介護の単位ごとに、一以上とすること。
ハ 理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士の数は、利用者に対して日常生活を営むのに必要な機能の減退を防止するための訓練を行う場合は、生活介護の単位ごとに、当該訓練を行うために必要な数とすること。
ニ 生活支援員の数は、生活介護の単位ごとに、一以上とすること。
四 サービス管理責任者 イ又はロに掲げる利用者の数の区分に応じ、それぞれイ又はロに定める数
イ 利用者の数が六十以下の場合 一人以上
ロ 利用者の数が六十を超える場合 一に、利用者の数が六十を超えて四十又はその端数を増すごとに一を加えて得た数以上
2 前項の利用者の数は、前年度の平均値を用いるものとする。ただし、新規に生活介護の事業を開始する場合は、推定数によるものとする。
3 第一項各号に規定する従業者(同項第一号に掲げる者を除き、条例第三十三条ただし書の規定により、第一項第三号の理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士に代わって置かれる機能訓練指導員を含む。)は、専ら当該生活介護事業所の職務に従事する者又は生活介護の単位ごとに専ら当該生活介護の提供に当たる者でなければならない。ただし、利用者の支援に支障がない場合は、この限りでない。
4 第一項第一号の管理者は、専ら当該生活介護事業所の管理に係る職務に従事する者でなければならない。ただし、生活介護事業所の管理上支障がない場合は、当該生活介護事業所の他の業務に従事し、又は当該生活介護事業所以外の事業所、施設等の職務に従事することができる。
5 第一項第三号の生活支援員のうち一人以上は、常勤の者でなければならない。
6 第一項第四号のサービス管理責任者のうち一人以上は、常勤の者でなければならない。

必要な人員配置として、管理者、医師、看護職員、リハビリ職員(理学療法士、作業療法士、言語聴覚士)、生活支援員があげられています。利用者の人数が増えるにつれて、必要な人員も増えていきます。

2 設備の基準

次に構造設備について条例および規則では以下の条件を要求しています。

条例 第三十七条 
生活介護事業所は、訓練・作業室、相談室、洗面所、便所、多目的室その他運営上必要な設備を規則で定める基準により設けなければならない。ただし、他の社会福祉施設等の設備を利用することにより、当該生活介護事業所の効果的な運営が見込まれる場合であって、かつ、利用者の支援に支障がないときは、この限りでない。
2 前項に規定する相談室及び多目的室は、利用者の支援に支障がない場合は、兼用とすることができる。
3 第一項に規定する設備は、専ら当該生活介護事業所の用に供するものでなければならない。ただし、利用者の支援に支障がない場合は、この限りでない。

規則 第八条
条例第三十七条第一項に規定する規則で定める基準は、次の各号に掲げる設備の区分に応じ、当該各号に定めるとおりとする。
一 訓練・作業室 訓練又は作業に支障がない広さを有するとともに、必要な機械器具等を備えること。
二 相談室 室内における談話の漏えいを防ぐための間仕切り等を設けること。
三 洗面所及び便所 利用者の特性に応じたものであること。

必要な設備として、訓練・作業質、相談室、洗面所、便所、多目的室などが求められます。

3 事業所の規模

最後に、生活介護事業者の規模について条例と規則についてみていきます。

条例 第三十五条
生活介護事業所の規模は、規則で定める基準を満たさなければならない。

規則 第六条
条例第三十五条に規定する規則で定める基準は、二十人以上の人員を利用させることができる規模とすることとする。ただし、離島その他の地域であって厚生労働大臣が定めるもののうち、将来にわたり利用者の確保の見込みがないものとして知事が認めるものにおいて事業を行う生活介護事業所については、十人以上の人員を利用させることができる規模とすることができる。
2 複数の生活介護の単位を置く場合の生活介護の単位ごとの利用定員は、二十人以上とする。

生活介護の基本的な規模は利用者数20人以上ということが分かります。

以上のような人員配置、構造設備や規模を踏まえて、サービス提供を開始しようとする場合、初期費用(法人設立費、家賃、内装や消防費用、備品など)として400万円程度かかりあす。また、開始3カ月の運営費用(家賃、人件費、光熱費など)として一月150万円かかるとすると、3か月で450万円程度必要となります。開業3か月は介護給付による報酬も入ってきません。そのため、安全を見越して、開業資金として900万円程度は必要になるのではないでしょうか。

今回、障害福祉サービスのうち、生活介護の指定要件などを取り上げました。その他障害福祉サービスについてご相談がある方は、お気軽に弊事務所へご連絡ください。

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