障害者福祉計画とは

障害者福祉計画とは、障害者及び障害児のために必要とされるサービス提供体制などのより良いあり方を決めていくものです。計画は定期的に見直されていきます。国は計画の基本方針を示し、都道府県は広域的見地から障害者サービス提供体制の構築を、市町村は地域の実情に則した見地から障害者サービスの見込量に応じたサービス事業者の確保についての計画などを立てていきます。

障害者福祉計画には、2つの法律に基づいて定められています。障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(以下、障害者総合支援法と略します)と児童福祉法です。

(1)基本方針

国が定めるとされる基本方針について、障害者総合支援法と児童福祉法は以下のように定めています。

障害者総合支援法 第八十七条
主務大臣は、障害福祉サービス及び相談支援並びに市町村及び都道府県の地域生活支援事業の提供体制を整備し、自立支援給付及び地域生活支援事業の円滑な実施を確保するための基本的な指針(以下「基本指針」という。)を定めるものとする。
2 基本指針においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 障害福祉サービス及び相談支援の提供体制の確保に関する基本的事項
二 障害福祉サービス、相談支援並びに市町村及び都道府県の地域生活支援事業の提供体制の確保に係る目標に関する事項
三 次条第一項に規定する市町村障害福祉計画及び第八十九条第一項に規定する都道府県障害福祉計画の作成に関する事項
四 その他自立支援給付及び地域生活支援事業の円滑な実施を確保するために必要な事項
3 基本指針は、児童福祉法第三十三条の十九第一項に規定する基本指針と一体のものとして作成することができる。
(以下略)

児童福祉法 第三十三条の十九
内閣総理大臣は、障害児通所支援、障害児入所支援及び障害児相談支援(~中略~)の提供体制を整備し、障害児通所支援等の円滑な実施を確保するための基本的な指針(~中略~「基本指針」という。)を定めるものとする。
2 基本指針においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 障害児通所支援等の提供体制の確保に関する基本的事項
二 障害児通所支援等の提供体制の確保に係る目標に関する事項
三 (~中略~)市町村障害児福祉計画及び(~中略~)都道府県障害児福祉計画の作成に関する事項
四 その他障害児通所支援等の円滑な実施を確保するために必要な事項
3 基本指針は、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律第八十七条第一項に規定する基本指針と一体のものとして作成することができる。
(以下略)

一体的な計画を作成することができることについて、障害者総合支援法第八十七条第三項及び児童福祉法第三十三の十九第三項が根拠となります。

障害福祉サービス等及び障害児通所支援等の円滑な実施を確保するための基本的な指針が告示されています。その中で、7つの成果目標(計画期間が終了する令和8年度末の目標)を掲げています。

1 福祉施設の入所の地域生活への移行
2 精神障害者にも対応した地域包括ケアシステムの構築
3 地域生活支援の充実
4 福祉施設から一般就労への移行等
5 障害児支援の提供体制の整備等
6 相談支援体制の充実・強化等
7 障害福祉サービス等の質を向上させるための取組みに係る体制の構築

(2)都道府県障害福祉計画

次に都道府県の策定する計画についてみていきます。

障害者総合支援法 第八十九条
都道府県は、基本指針に即して、市町村障害福祉計画の達成に資するため、各市町村を通ずる広域的な見地から、障害福祉サービスの提供体制の確保その他この法律に基づく業務の円滑な実施に関する計画(以下「都道府県障害福祉計画」という。)を定めるものとする。
2 都道府県障害福祉計画においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 障害福祉サービス、相談支援及び地域生活支援事業の提供体制の確保に係る目標に関する事項
二 当該都道府県が定める区域ごとに当該区域における各年度の指定障害福祉サービス、指定地域相談支援又は指定計画相談支援の種類ごとの必要な量の見込み
三 各年度の指定障害者支援施設の必要入所定員総数
四 地域生活支援事業の種類ごとの実施に関する事項
3 都道府県障害福祉計画においては、前項各号に掲げる事項のほか、次に掲げる事項について定めるよう努めるものとする。
一 前項第二号の区域ごとの指定障害福祉サービス又は指定地域相談支援の種類ごとの必要な見込量の確保のための方策
二 前項第二号の区域ごとの指定障害福祉サービス、指定地域相談支援又は指定計画相談支援に従事する者の確保又は資質の向上のために講ずる措置に関する事項
三 指定障害者支援施設の施設障害福祉サービスの質の向上のために講ずる措置に関する事項
四 前項第二号の区域ごとの指定障害福祉サービス又は指定地域相談支援及び同項第四号の地域生活支援事業の提供体制の確保に係る医療機関、教育機関、公共職業安定所、障害者職業センター、障害者就業・生活支援センターその他の職業リハビリテーションの措置を実施する機関その他の関係機関との連携に関する事項
4 都道府県は、第八十九条の二の二第一項の規定により公表された結果その他のこの法律に基づく業務の実施の状況に関する情報を分析した上で、当該分析の結果を勘案して、都道府県障害福祉計画を作成するよう努めるものとする。
5 都道府県障害福祉計画は、児童福祉法第三十三条の二十二第一項に規定する都道府県障害児福祉計画と一体のものとして作成することができる。
(以下略)

児童福祉法 第三十三条の二十二
都道府県は、基本指針に即して、市町村障害児福祉計画の達成に資するため、各市町村を通ずる広域的な見地から、障害児通所支援等の提供体制の確保その他障害児通所支援等の円滑な実施に関する計画(以下「都道府県障害児福祉計画」という。)を定めるものとする。
2 都道府県障害児福祉計画においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 障害児通所支援等の提供体制の確保に係る目標に関する事項
二 当該都道府県が定める区域ごとの各年度の指定通所支援又は指定障害児相談支援の種類ごとの必要な見込量
三 各年度の指定障害児入所施設等の必要入所定員総数
3 都道府県障害児福祉計画においては、前項各号に掲げる事項のほか、次に掲げる事項について定めるよう努めるものとする。
一 前項第二号の区域ごとの指定通所支援の種類ごとの必要な見込量の確保のための方策
二 前項第二号の区域ごとの指定通所支援又は指定障害児相談支援の質の向上のために講ずる措置に関する事項
三 指定障害児入所施設等の障害児入所支援の質の向上のために講ずる措置に関する事項
四前項第二号の区域ごとの指定通所支援の提供体制の確保に係る医療機関、教育機関その他の関係機関との連携に関する事項
4 都道府県は、第三十三条の二十三の二第一項の規定により公表された結果その他のこの法律に基づく業務の実施の状況に関する情報を分析した上で、当該分析の結果を勘案して、都道府県障害児福祉計画を作成するよう努めるものとする。
5 都道府県障害児福祉計画は、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律第八十九条第一項に規定する都道府県障害福祉計画と一体のものとして作成することができる。
(以下略)

都道府県計画についても障害者総合支援法と児童福祉法に基づいて策定されます。

東京都を例としてみてみると、東京都障害者・障害児施策推進計画(令和6年度から令和8年度までの3年間)で策定しています。

計画の一部数値目標をみてみます。

グループホーム 令和8年度末目標 2,700人増
通所施設等            5,100人増
短期入所               140人増
施設入所者(入所施設定員)数   7,344人(令和4年度末実績7,408人)

基本方針として示された「福祉施設の入所の地域生活への移行」や「地域生活支援の充実」などがグループホームや通所施設の増と入所施設定員の微増に色濃く反映していると思います。

(3)市町村障害福祉計画

東京都の計画を踏まえて、今度は市町村の障害者福祉計画をみていきます。市町村においても都道府県と同様に障害者総合支援法と児童福祉法に基づいて障害福祉計画が策定されています。

障害者総合支援法 第八十八条
市町村は、基本指針に即して、障害福祉サービスの提供体制の確保その他この法律に基づく業務の円滑な実施に関する計画(以下「市町村障害福祉計画」という。)を定めるものとする。
2 市町村障害福祉計画においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
一 障害福祉サービス、相談支援及び地域生活支援事業の提供体制の確保に係る目標に関する事項
二 各年度における指定障害福祉サービス、指定地域相談支援又は指定計画相談支援の種類ごとの必要な量の見込み
三 地域生活支援事業の種類ごとの実施に関する事項
3 市町村障害福祉計画においては、前項各号に掲げるもののほか、次に掲げる事項について定めるよう努めるものとする。
一 前項第二号の指定障害福祉サービス、指定地域相談支援又は指定計画相談支援の種類ごとの必要な見込量の確保のための方策
二 前項第二号の指定障害福祉サービス、指定地域相談支援又は指定計画相談支援及び同項第三号の地域生活支援事業の提供体制の確保に係る医療機関、教育機関、公共職業安定所、障害者職業センター、障害者就業・生活支援センターその他の職業リハビリテーションの措置を実施する機関その他の関係機関との連携に関する事項
4 市町村障害福祉計画は、当該市町村の区域における障害者等の数及びその障害の状況を勘案して作成されなければならない。
5 市町村は、当該市町村の区域における障害者等の心身の状況、その置かれている環境その他の事情を正確に把握するとともに、第八十九条の二の二第一項の規定により公表された結果その他のこの法律に基づく業務の実施の状況に関する情報を分析した上で、当該事情及び当該分析の結果を勘案して、市町村障害福祉計画を作成するよう努めるものとする。
6 市町村障害福祉計画は、児童福祉法第三十三条の二十第一項に規定する市町村障害児福祉計画と一体のものとして作成することができる。
(以下略)

児童福祉法 第三十三条の二十
市町村は、基本指針に即して、障害児通所支援及び障害児相談支援の提供体制の確保その他障害児通所支援及び障害児相談支援の円滑な実施に関する計画(以下「市町村障害児福祉計画」という。)を定めるものとする。
2市町村障害児福祉計画においては、次に掲げる事項を定めるものとする。
一障害児通所支援及び障害児相談支援の提供体制の確保に係る目標に関する事項
二各年度における指定通所支援又は指定障害児相談支援の種類ごとの必要な見込量
3市町村障害児福祉計画においては、前項各号に掲げるもののほか、次に掲げる事項について定めるよう努めるものとする。
一前項第二号の指定通所支援又は指定障害児相談支援の種類ごとの必要な見込量の確保のための方策
二前項第二号の指定通所支援又は指定障害児相談支援の提供体制の確保に係る医療機関、教育機関その他の関係機関との連携に関する事項
4市町村障害児福祉計画は、当該市町村の区域における障害児の数及びその障害の状況を勘案して作成されなければならない。
5市町村は、当該市町村の区域における障害児の心身の状況、その置かれている環境その他の事情を正確に把握するとともに、第三十三条の二十三の二第一項の規定により公表された結果その他のこの法律に基づく業務の実施の状況に関する情報を分析した上で、当該事情及び当該分析の結果を勘案して、市町村障害児福祉計画を作成するよう努めるものとする。
6市町村障害児福祉計画は、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律第八十八条第一項に規定する市町村障害福祉計画と一体のものとして作成することができる。
(以下略)

日野市、八王子市、立川市の3市において、令和6年度開始の計画が策定されています。
3市の計画も東京都と同様に、障害者総合支援法及び児童福祉法を踏まえた一体的なものとなっています。

実際の計画に掲げられている障害サービスの見込量をみてみます。サービスの種類のうち、生活介護、就労継続支援B型、短期入所、グループホーム、施設入所支援、児童発達支援、放課後等デイサービスに限ってみていきます。

日野市

生活介護  令和5年度実績 407人/月 令和8年度計画452人/月
就労継続支援B型 令和5年度実績 392人/月 令和8年度計画416人/月
短期入所  令和5年度実績 392人/月 令和8年度計画416人/月
グループホーム  令和5年度実績 293人/月 令和8年度計画329人/月
施設入所支援  令和5年度実績 99人/月 令和8年度計画110人/月
児童発達支援  令和5年度実績 131人/月 令和8年度計画220人/月
放課後等デイサービス  令和5年度実績 424人/月 令和8年度計画511人/月

八王子市

生活介護  令和5年度実績 1,392人/月 令和8年度計画1,443人/月
就労継続支援B型  令和5年度実績 1,695人/月 令和8年度計画1,806人/月
短期入所  令和5年度実績 396人/月 令和8年度計画396人/月
グループホーム  令和5年度実績 936人/月 令和8年度計画984人/月
施設入所支援  令和5年度実績 363人/月 令和8年度計画363人/月
児童発達支援  令和5年度実績 725人/月 令和8年度計画763人/月
放課後等デイサービス  令和5年度実績 1,393人/月 令和8年度計画1,465人/月

立川市(※立川市の実績は令和4年度を使用しています)

生活介護  令和4年度実績 409人/月 令和8年度計画435人/月
就労継続支援B型  令和4年度実績 442人/月 令和8年度計画465人/月
短期入所  令和4年度実績 83人/月 令和8年度計画96人/月
グループホーム  令和4年度実績 254人/月 令和8年度計画270人/月
施設入所支援  令和4年度実績 117人/月 令和8年度計画117人/月
児童発達支援  令和4年度実績 253人/月 令和8年度計画290人/月
放課後等デイサービス  令和4年度実績 511人/月 令和8年度計画600人/月

国、東京都、市の三者とも一貫した方向性として、入所施設からグループホームなどの地域移行を進めていることがあると思います。日中活動系サービスの充実は地域移行をすすめるにあたってより一層重要になってきています。

障害者福祉基本計画は定期的に見直されていきます。その時期に応じて必要な障害者サービスの種類や量に変更が生じていきます。障害者福祉基本計画をはじめ、障害者サービスについてのご相談のある方はお気軽に弊事務所へご連絡ください。

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