建設工事の適正な工期の設定

長年、建設業界では長時間労働が常態とされてきました。建設業界の若者就業者数は減少傾向にあります。今後の建設業界が健全な形で発展していくために、より働きやすい労働環境を整備する必要があります。その一つは、適正な工期で建設工事を行うことです。適正な工期が確保されれば、過度な長時間労働は必要となくなり、若者就業者数の増加も期待できます。

建設業法では工期設定について、以下のように定めています。

第十九条の五
注文者は、その注文した建設工事を施工するために通常必要と認められる期間に比して著しく短い期間を工期とする請負契約を締結してはならない。

不当に短い工期での請負契約は、監督官庁からの処分の対象となり得るものです。

第二十八条
国土交通大臣又は都道府県知事は、その許可を受けた建設業者が(中略)法律の規定(中略)に違反した場合においては、当該建設業者に対して、必要な指示をすることができる。特定建設業者が(中略)勧告に従わない場合において必要があると認めるときも、同様とする。
(中略)
一 建設業者が建設工事を適切に施工しなかつたために公衆に危害を及ぼしたとき、又は危害を及ぼすおそれが大であるとき。
二 建設業者が請負契約に関し不誠実な行為をしたとき。
(中略)
2 都道府県知事は、その管轄する区域内で建設工事を施工している第三条第一項の許可を受けないで建設業を営む者が次の各号のいずれかに該当する場合においては、当該建設業を営む者に対して、必要な指示をすることができる。
一 建設工事を適切に施工しなかつたために公衆に危害を及ぼしたとき、又は危害を及ぼすおそれが大であるとき。
二 請負契約に関し著しく不誠実な行為をしたとき。
(以下、省略)

適正な工期を設定しない請負契約は、建設工事を適切に施工できる環境とはいえず、請負契約自体も適切なものとはいえません。建設業法二十八条に違反すると判断された場合は、国や地方公共団体から営業停止や改善の指示といった処分を受ける可能性があります。

適正な工期を設定することに関して、国土交通省は、「建設工事における適正な工期設定等のためのガイドライン」を示しています。

時間外労働の上限規制の適用に向けた取り組みとして、適正な工期設定・施工時期等の標準化を打ち出しています。

工期の設定に当たっては、現場技術者や下請の社員、技能労働者などを含め建設工事に従事する全ての者が時間外労働の上限規制に抵触するような長時間労働を行うことのないよう、当該工事の規模及び難易度、地域の実情、自然条件、工事内容、施工条件等のほか、建設工事に従事する者の週休2日の確保等、下記の条件を適切に考慮するものとする。

・ 建設工事に従事する者の休日(週休2日に加え、祝日、年末年始及び夏季休暇)
・ 建設業者が施工に先立って行う、労務・資機材の調達、調査・測量、現場事務所の設置、BIM/CIM の活用等の「準備期間」
・ 施工終了後の自主検査、後片付け、清掃等の「後片付け期間」
・ 降雨日、降雪・出水期等の作業不能日数
・ 用地買収や建築確認、道路管理者との調整等、工事の着手前の段階で発注者が対応すべき事項がある場合には、その手続きに要する期間
・ 過去の同種類似工事において当初の見込みよりも長い工期を要した実績が多いと認められる場合における当該工期の実績

ここにあるBIM/CIMとは、建設工事に関して計画や調査、設計段階から3次元モデルを導⼊し、その後の施⼯、維持管理の各段階においても3次元モデルを連携・発展させて事業全体にわたる関係者間の情報共有を容易にした⼀連の建設⽣産・管理システムというものです。ICTを活用して建設工事自体の効率化・⾼度化を推進しているものです。

上記のガイドラインは建設業の時間外労働の上限規制を促すもので、働き方改革関連法による改正労働基準法に基づいています。

建設業界の人手不足の一つの要因としての時間外労働の長さがあげられます。適正な工期設定を行うことで魅力ある職場環境に繋がっていくと思います。建設業法も他の法律と同様に、社会環境の変化に応じて改正されていきます。建設業法の改正内容等ご質問のある方は、お気軽に弊事務所へご連絡ください。

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