出入国管理及び難民認定法(以下、入管法と略します)では、外国人が日本に来て滞在する手続きの中には二つの用語が使用されています。入国と上陸です。
なぜ、入国と上陸と似たような概念の言葉を使用するのでしょうか。用語の使い分けの理由として、法務省入国管理局は次のように説明しています。
外国人が我が国の「領海又は領空に入ること」を入国,我が国の「領土内に足を踏み入れること」を上陸という。したがって,出入国港において,いわゆる「入国審査」の結果,外国人に与えられる入国・在留のための許可のことを入管法上は「上陸許可」という。
外国と国境を接している国では,入国とは外国人が国境を越えて領土内に入ることであり,これに加えて,上陸という概念を区別する必要はない。しかしながら,四方を海に囲まれた我が国においては,両者を区別して用いている。
日本が島国であるという地理的条件から二つの用語の使い分けが必要になることがわかります。上記説明文の中にある領土や領海、領空について詳しくみていきます。
外務省のホームページではそれぞれの用語を以下のとおりとしています。
「領土」とは、国家が領有する陸地を指し、国家はその領土に対して主権を有します。
日本の領海は、国連海洋法条約に基づいた「領海及び接続水域に関する法律」により、原則として基線(通常は海岸の低潮線)から12海里(約22.2km)までの海域と定められています。日本の領海には、日本の主権が及びます。
領空とは、領土と領海の上空を指します。日本の領空には、日本の主権が及びます。
陸地及び海、さらにはその上である空にも日本の主権が及びます。
入管法は、外国人が日本に入国し、上陸するにあたるルールを定めているものです。
はじめに入国について、入管法がどのように定めているのかをみていきます。
(外国人の入国)
第三条次の各号のいずれかに該当する外国人は、本邦に入つてはならない。
一有効な旅券を所持しない者(有効な乗員手帳を所持する乗員を除く。)
二入国審査官から上陸許可の証印若しくは第九条第四項の規定による記録又は上陸の許可(以下「上陸の許可等」という。)を受けないで本邦に上陸する目的を有する者(前号に掲げる者を除く。)
2本邦において乗員となる外国人は、前項の規定の適用については、乗員とみなす。
外国人は上記に該当する場合は入国できません。しかし、入国自体について許可を受ける必要はありません。
陸地で接している隣国同士でいうところの入国という概念は、海で囲まれている日本では上陸という概念でとらえています。上陸の時点で、対象となる外国人に対して、上陸許可を与えるかどうかの判断をする手続きに入ることになります。
対象となる外国人が感染症や重度の精神障害、薬物使用などといった上陸拒否となるような理由がないときは、上陸の申請手続き(以下のとおり入管法は定めている)に進むことになります。
(上陸の申請)
第六条本邦に上陸しようとする外国人(乗員を除く。以下この節において同じ。)は、有効な旅券で日本国領事官等の査証を受けたものを所持しなければならない。ただし、国際約束若しくは日本国政府が外国政府に対して行った通告により日本国領事官等の査証を必要としないこととされている外国人の旅券、第二十六条第一項の規定により再入国の許可を受けている者(第二十六条の二第一項又は第二十六条の三第一項の規定により再入国の許可を受けたものとみなされる者を含む。以下同じ。)の旅券又は第六十一条の二の十五第一項の規定により難民旅行証明書の交付を受けている者の当該証明書には、日本国領事官等の査証を要しない。
2前項本文の外国人は、その者が上陸しようとする出入国港において、法務省令で定める手続により、入国審査官に対し上陸の申請をして、上陸のための審査を受けなければならない。
3前項の申請をしようとする外国人は、入国審査官に対し、申請者の個人の識別のために用いられる法務省令で定める電子計算機の用に供するため、法務省令で定めるところにより、電磁的方式(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式をいう。以下同じ。)によって個人識別情報(指紋、写真その他の個人を識別することができる情報として法務省令で定めるものをいう。以下同じ。)を提供しなければならない。ただし、次の各号のいずれかに該当する者については、この限りでない。
一日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法(平成三年法律第七十一号)に定める特別永住者(以下「特別永住者」という。)
二十六歳に満たない者
三本邦において別表第一の一の表の外交の項又は公用の項の下欄に掲げる活動を行おうとする者
四国の行政機関の長が招へいする者
五前二号に掲げる者に準ずる者として法務省令で定めるもの
上陸の申請のためには、上記のように必要な資料を揃える必要があります。日本への滞在期間により、旅券や査証に加えて在留資格認定証明書を用意する必要になることがあります。上陸の申請の内容や手続きなどご質問がございましたら、お気軽に弊事務所へご連絡ください。
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