遺品整理業とは、故人の自宅にある家具や書籍など私物一式を片付けることを業務として行う事業形態です。遺品整理業を利用する事情は様々だと思います。故人の家族が遠方にいる、または、故人と近しい親族がいないような時に、とても必要性の高いものです。
遺品整理業をはじめるにあたって、どこまでをご自分の守備範囲としてとらえるかは重要です。取り組む業務内容によっては、別途許認可や特許使用料などが必要となる可能性があるからです。
遺品整理業は特殊清掃を要するものと要しないものとがあります。特殊清掃が要する状態とは、遺体発見まで時間がかかり、遺体による汚損のため、通常の清掃作業では汚れや臭いなど対処できない時に、必要となるものです。
特殊清掃は不要な状態の4つの事業形態をまずは見ていきます。
はじめに、一番シンプルな形態としては、家にある遺品を屋外に運び、運搬や処分の許可を受けた一般廃棄物収集運搬業者と一般廃棄物処分業者に委託するものです。この形態では特に許認可が必要ではありません。
次に考えられる形態は、処分業者まで自社で運搬するところまで業務範囲とするものです。この場合、一般廃棄物収集運搬業の許可が必要となります。ただし、一般廃棄物収集運搬業の許可を受けることは大変難しいと言われています。なぜなら、自社だけに求められている条件をクリアしても十分ではないからです。
廃棄物の処理及び清掃に関する法律第7条第5項で以下のように定められています。
第七条 一般廃棄物の収集又は運搬を業として行おうとする者は、当該業を行おうとする区域(運搬のみを業として行う場合にあっては、一般廃棄物の積卸しを行う区域に限る。)を管轄する市町村長の許可を受けなければならない。ただし、事業者(自らその一般廃棄物を運搬する場合に限る。)、専ら再生利用の目的となる一般廃棄物のみの収集又は運搬を業として行う者その他環境省令で定める者については、この限りでない。
(以下、中略)
5 市町村長は、第一項の許可の申請が次の各号のいずれにも適合していると認めるときでなければ、同項の許可をしてはならない。
一 当該市町村による一般廃棄物の収集又は運搬が困難であること。
二 その申請の内容が一般廃棄物処理計画に適合するものであること。
三 その事業の用に供する施設及び申請者の能力がその事業を的確に、かつ、継続して行うに足りるものとして環境省令で定める基準に適合するものであること。
(以下、略)
つまり、申請先である市町村の状況によって許可は左右されます。一般的に市町村の処理計画上では収集能力として過剰状態といわれています。自由競争ではないのです。
一般廃棄物収集運搬業の取得が難しい現状が、逆に違法業者を生み出している状況にあります。無料回収を謳っている業者の中には一般廃棄物収集運搬業の許可を取得していない可能性もあると思います。
3番目の形態としては、遺品をすべて処分するのではなく、財産的価値があるものは買い取りなどして中古品販売に回していくというものです。中古品の買取・販売には、古物商の許可をとる必要があります。
4番目の形態としては、遺品の一部を中古品として販売するのではなく、家族が形見としてもらい受けたい時に、その形見の品を運送して家族のもとへ届けるものです。自社でのトラックを使用したい場合は、一般貨物自動車運送業許可や貨物軽自動車運動業届出を行う必要があります。
次に、上記のいずれかの場合に加えて、特殊清掃を施した形態を考えていきます。
先に述べたように、特殊清掃の方法に対して、特許使用料など求められる場合があります。
遺体の状態が悪いと、特殊清掃のみでは対応できない場合があります。すなわち、室内の壁紙や床材を剥がして入れ替えるなど、リフォーム工事が必要になる場合もあり得ます。リフォーム工事の規模や価格によっては、建設業許可がないと請け負えないことになるかもしれません。
建設業法 第三条
建設業を営もうとする者は、次に掲げる区分により、この章で定めるところにより、二以上の都道府県の区域内に営業所(本店又は支店若しくは政令で定めるこれに準ずるものをいう。以下同じ。)を設けて営業をしようとする場合にあっては国土交通大臣の、一の都道府県の区域内にのみ営業所を設けて営業をしようとする場合にあっては当該営業所の所在地を管轄する都道府県知事の許可を受けなければならない。ただし、政令で定める軽微な建設工事のみを請け負うことを営業とする者は、この限りでない。
(以下、略)
つまり、軽微な工事に収まらなければ建設業許可が必要です。軽微な工事については、建設業法施行令第一条の二で以下のように定められています。
第一条の二 法第三条第一項ただし書の政令で定める軽微な建設工事は、工事一件の請負代金の額が五百万円(当該建設工事が建築一式工事である場合にあっては、千五百万円)に満たない工事又は建築一式工事のうち延べ面積が百五十平方メートルに満たない木造住宅を建設する工事とする。
2 前項の請負代金の額は、同一の建設業を営む者が工事の完成を二以上の契約に分割して請け負うときは、各契約の請負代金の額の合計額とする。ただし、正当な理由に基いて契約を分割したときは、この限りでない。
3 注文者が材料を提供する場合においては、その市場価格又は市場価格及び運送賃を当該請負契約の請負代金の額に加えたものを第一項の請負代金の額とする。
以上見てきましたように、遺品整理業はその形態によっては、許認可を受ける必要があります。一番シンプルな形で始めて、ご自分の理想的な事業形態を探っていかれるのがよいのではないでしょうか。遺品整理業について、その他相談などある方は、お気軽に弊事務所へご連絡ください。
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